「懐紙入れ 多包み」の開発者インタビュー
新商品、「懐紙入れ 多包み(たづつみ)」は日常で使いやすい工夫が凝らされた、普段遣いの懐紙入れ。市場にもなかったアイテム、とたくさんの反響を頂いております。その開発者であり、リプラグのブランドアートディレクターの永嶋邦子さんにインタビューし、開発ストーリーを伺いました。
―普段とは商品開発のプロセスが異なっていると伺いました。
今回の商品開発は、「最近気になるものは?」「ロングセラーってなんだと思う?」といったようなリプラグメンバーへのヒアリングから始めました。メンバー内で行われた話し合いをきっかけに考える感じでしたね。普段行なっている、個で考えるようなコンペ(コンペディション)の形式ではなく、何を作るのかを決めずにリサーチから始まったのがいつもと違う流れでした。
世の中には良い商品がすでにたくさん溢れています。一人で考えていると、「もう作らなくていいじゃん」っていう気持ちになってしまうことも。(笑)それを「こんなのあったらいいな」というような第三者の意見を聞くことによって、新しい見え方や考え方をダイレクト取り入れることができ、とても考えやすかったです。
―懐紙入れというアイデアが出たきっかけは何だったのでしょう。
話し合いでは、「筆記具の携帯アイテム」やミニマリズムに通ずるものとして「江戸文化」というようなキーワードが出てきていました。あと、実際に懐紙入れを欲しがっているメンバーがいたんです。自分でも、使いたいと思うような懐紙入れが無いな、とも思っていて。それらの要素がうまく重なり合いそうな気がしたので、じゃあ懐紙入れを作ろう!ということになりました。
―懐紙入れを作るにあたり、こだわったことは何でしたか。
素材でしょうか。リプラグらしさを残すために、紙を使いたいという気持ちが根底がありました。ですが、懐紙の入れ物ですので、水に強くて、強度のあるような紙に近しいものを探しました。和風すぎない、デザインを盛り込めるような素材であることも重要でしたね。タイベック®︎にしたのは、アウトドア用品でそれを使用したアイテムを見始めたことがきっかけです。紙のように薄いのに、とにかく強いのでぴったりだったんです。
―開発で苦労したことはありましたか。
特殊な素材ですので、製造先を探すことが大変でした。製造最小ロット数があまりにも多すぎたり、オリジナルの形状を作ることができないと断られたり。タイベック®︎は防護服など医療用製品に使われることが多く、衛生面で定形外の製品が作れないと言われたところもありました。
―「武士道」「茶道」「書道」という3つのデザインはどのように考えられたんですか。
このデザインにしたい!という気持ちよりは、方向性の切り口で決まりました。まず、土台として、日本らしさをデザインに盛り込みたいと思っていました。ボツになりましたが、漫画風な案もあったんです。でも、基本的な懐紙の使い方、「包む、拭く、書く」という言葉をもとに方向性を考え始めました。
<武士道>
懐紙は刀の手入れに使用されていたため、始めの段階から『武士』のイメージは出てきていました。あとそういえば、当時読んでいた新渡戸稲造の「武士道」という本に影響を受けていたと思います。(笑)シンプルに暮らす、江戸文化という初めに出てきたワードにも繋がっていくものだと思います。
<茶道>
茶道は自身がやっていないため、調査から始めました。調べていく中で、「茶道」は人に対する思いやりとか、心遣いが素晴らしいと思いました。利休七則の言葉に感動し、それをモチーフにデザインをしました。
<書道>
ここまできたら、「道」繋がりにしたくて、「書道」案を考えました。基本動作の3つの「道」の締めとして、「書く」ことがコンセプトに合っていると思ったからです。日本語の文字を形状、造形として美しいと思っているので、それをビジュアルに。「永」という漢字をベースに、その要素をバラしてデザインしました。なぜ「永」なのかというと、とめ・はね・はらいなどの漢字の全ての要素が入っていると言われている文字だからです。デザイナーがタイポグラフィを学ぶ際に一番最初に書かせられる字なんですよ。
「武士道」「茶道」「書道」の3つのデザインは、全てに懐紙を使う工程が入っていて、何かの「基礎」となっているという部分で共通し、整っているんです。ぜひそこにも着目して見て頂けたら嬉しいです。
―この記事を読まれているみなさまへメッセージをお願いします。
懐紙は本当に便利な道具なので、残っていってほしい日本のモノだと思っています。「懐紙入れ 多包み」をきっかけに、みなさまに興味を持っていただけたら嬉しいです。ちなみに、私はイニシャルを貼って、ちょっとカスタマイズして使ってます。ぜひ日常生活に懐紙を取り入れてみてください!